映画
『エクレールお菓子放浪記』
私たちは地方からの文化発信を願って、
地域の方々と手を結んでいくつかの映画を製作してきました。
2015年 公開作品
出演
吉井一肇 早織
遠藤憲一 高橋惠子
尾藤イサオ 林隆三
三上寛 春風亭昇太
いしだあゆみ
監督
近藤 明男
原作
西村 滋
いつの間に私たちの日本は、こんな姿になってしまったのでしょうか。
声高に「自己責任論」が叫ばれ、自らの利のためなら、他者を蹴落とすことが、あたかも社会の公正なルールとして語られる・・・。
こんな折、手にとった原作本「お菓子放浪記」は、私の胸に〝支え合う人の心のやさしさ〟を、心やさしく語ってくれたのでした。 製作を決意した私の前に横たわっていた課題の一つは、撮影地の選定の問題でした。
映画に描かれる時代はあの戦争の時代、そして昭和の情景を描かなければならないこの企画にとって、撮影地の選定の件は全体の製作予算にも関る大きな課題でした。
そんな折足を運んだ宮城県石巻市は、この作品のその後の歩みを大きく運命づけることとなりました。
古い歴史を語る石巻には、この作品の撮影にまさにぴったりの場所が数々あったのでした。
石巻を中心に、この映画の全てを宮城県で撮ろうとした私たちの決定を、宮城県民は嬉びをもって受け止めて下さいました。
〝支え合う人の心のやさしさ〟を宮城から全国に発信することは、宮城の誇りともなる・・・ 県知事を先頭にした製作支援県民運動組織は、幅広い方々のご賛同で発足し、県民に向けた製作支援運動は大きく展開されて行きました。
そして、寄せられたご支援は4,000万円にのぼったのでした。
まさに物心両面から支えていただき、迎えたクランクインは、小春日和に恵まれた石巻市北上川河口の一面に拡がるヨシ原で行われたのでした。
そして、その対岸にあったのが、あの大川小学校だったことは、後に振り返るなら、この作品の運命を予感させるものだったのかも知れなかったのでした。
2011年2月に完成・・・3月10日の東京での披露試写会・・・そして翌日の大惨禍・・・。
めまぐるしく展開したこの間の動き・・・。
そしてあの日以降この作品は、東日本大震災の被災地支援の映画として語られ、その上映は2年をかけて、全国827会場45万人の心の輪をつなぐこととなったのでした。
この間、私たちを支えて下さった全国の暖かい手の数々は、私たちの会社をも危機から救い上げ、その後の協同組合ジャパン・スローシネマ・ネットワークの発足にもつながることとなりました。
まさに、〝支え合う人の心のやさしさ〟そのものを私たちの胸にも深く刻んだ忘れることの出来ない一作です。